診断の話

眼瞼下垂症との鑑別が非常に重要となる 眼瞼痙攣とは(症状・原因・治療など)

※2020.9.18 記事内容の修正・更新を行いました。


 ◼︎眼瞼痙攣(がんけんけいれん)とは、どんな病気??

 

眼瞼痙攣写真

まぶたが開きづらく病気として、眼瞼下垂症を診断する際に、一番に鑑別しなくてはいけない疾患に「眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」があります。


まぶたを閉じる際には、眼瞼挙筋という瞼を開ける筋肉が弛緩し、眼輪筋という筋肉が収縮することで可能となります。


クルマの運転で例えると、ブレーキから足を離して、アクセルを踏み込んで加速するはずなのに、ブレーキを踏み続けた状態を維持したまま、同時にアクセルを踏んで車を加速させるものの、思うように、車が加速しない・・・そんなイメージです。


眼瞼痙攣(がんけんけいれん)とは、その瞼(まぶた)を閉じる筋肉である眼輪筋が、何らかの原因で、本人の医師とは無関係に収縮過多になることで、まぶたが開きづらくなる疾患です。


そういった意味で、眼瞼挙筋に異常が出ることで、まぶたが上がりにくくなる眼瞼下垂症とは異なっているため、眼瞼けいれんは、偽眼瞼下垂に分類されます。


通常は、両眼の瞼(まぶた)に症状が出現することが多く、やたらと瞬き(まばたき)の回数が増えたり、眩しさから目を閉じたままになってしまうこともあります。


眼輪筋の力は、眼瞼挙筋よりも圧倒的に強く、眼輪筋が閉じようとすれば、眼瞼挙筋が抗うことはできず、瞼(まぶた)は簡単に閉じてしまいます。

 

それでも、開けようとするため、開け閉めを繰り返すことで、早い瞬き(まばたき)を繰り返したり、目がピクピクすることになり、非常に不快感が出てくるということです。


放置すればするほど、治りにくく、更年期を境に女性に多く発症します。男女比でいうと、男性の約2倍以上となっております。


自覚症状とすれば、「まぶしさ(眩しさ)」「目の乾き」「目を開けているのがつらい」などドライアイ症状にも似た様々な症状があります。


日本には意外と多く、数十万人近い患者がいると推定されており、軽度の眼瞼痙攣の場合、ドライアイと誤診され、無意味なドライアイ用の点眼液を長期間処方されるも改善しないことから、診断に至るケースも多々あります。

 

■診断の仕方(まばたきテスト)


眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)は、いわば、瞬き(まばたき)の制御系の異常ともいうことができ、目の瞬き(まばたき)の動きにも異常が出てしまい、自然な瞬き(まばたき)が出来なくなります。


眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)が重度であると、目を開いた状態を持続することができず、目を開けようとしても、眼輪筋やその周囲の筋が無意識に過剰に動きます。


しかしながら、軽度、中等度の多くの患者さんでは、そのような異常が簡単には見いだせないことがあります。


そうした軽度、中等度の患者さんは、意識してリズムよく瞬目をした場合に、リズムが乱れた不随意瞬目が混入したり、眼周囲筋や顔面筋に不随意運動が混入することがあり、また自然で滑らかな開瞼ができないなど、眼瞼痙攣の症状が初めて表面化し、診断ができることがあります。


簡単にいうと、目をぎゅーっとつぶるような瞬き(まばたき)をしているのが特徴であり、その動きをみて、診断のアタリを付けていきます。

 


速瞬目テスト


軽くてよいので、できるだけ速い瞬目(まばたき)を連続して行うようにします。

最低10秒間以上、可能であれば30秒程度持続して瞬目した際に、眉毛部まで動くような強い瞬目のみですばやい瞬きができなかったり、瞬きの最中に他の顔面筋の不随意の運動がみられたり、顔面筋の強い攣縮発作がみられれば陽性と判定します。


強瞬テスト

眼瞼を強く閉じ、その後開瞼させます。

この動作を反復させ、閉瞼後に瞼を開けることができなくなったり、開閉瞼時に眼周囲顔面筋の強い攣縮がみられれば陽性と判定します。


ポンポコポンテスト


ポン・ポコ・ポンとリズムに合わせて、瞬き(まばたき)をした際に、上手くリズムに乗って瞬き(まばたき)が出来ない場合に陽性と判定します。


 

■診断の仕方(問診)


眼瞼痙攣は、まばたきを中心とした状態を観察した上で、診断を付けていくわけですが、問診も非常に診断の手がかりとなります。


■まばたきの回数がやたらと多い
■明るい場所にいると、とてもまぶしく感じる
■目を開いている状態がツライ(目をつぶっていた方が楽)
■目がやたらと乾く、しょぼしょぼする、痛く感じるが、点眼をしても改善しない
■歩いていると、人混みで人やものにぶつかる、またはぶつかりそうになる
■歩いていて、電柱や立木、停車中の車などに気づかず、ぶつかったことがある
■太陽や風、階段の昇降が苦手で外出を控えるほどである
■危険を感じるので車や自転車の運転をしなくなった
■手を使って目を開けなければならない時がある
■自然と片目をつぶってしまう

これらの項目において、1つでも当てはまる場合は、眼瞼痙攣の疑いがあります。


 

■特殊な眼瞼痙攣:Meige症候群


「眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」は、眼瞼周囲の筋肉,主に「眼輪筋(がんりんきん)」の過度の収縮が起こったり、収まったり、または、ずっと続いたりすることで、無意識に目を閉じてしまう疾患で、他に神経学的,眼科学的異常が見当たらない状態と定義されます。

その中でも、痙攣症状が他の顔面の筋肉やさらには舌、のど(咽頭や頸部の筋肉)にまで及ぶものを Meige (メージュ)症候群と呼んでおります。

 

Meige (メージュ)症候群については、こちらのブログ記事:偽眼瞼下垂の治療「Meige症候群」をご覧になってください。

 

この疾患は神経医学的には局所ジストニア(ジストニア=身体のいくつかの筋肉が無意識に持続的に収縮してしまい,捻れや歪みが生ずるもの)の一種だと言われております。

 

瞬目(まばたき)の制御異常がその病気の本質だと考えると理解しやすく,随伴するさまざまな眼およびその周囲の感覚の異常が出てきます。

 

ただし,眼瞼けいれんの中には原因不明のものから,薬物によって引き起こされたり、他の疾患により引き起こされたりするケースもあります。

 


 

◼︎眼瞼痙攣の治療法

ボトックス注射の写真
大事なこととして、眼瞼痙攣を根本的に治す方法はありません。


どちらかというと、症状を和らげるための治療が中心となります。


眼輪筋などの原因となっている目の周囲の筋肉に対して、ボツリヌス毒素を注射して症状を抑えるようになります。


ボトックス注射(ボツリヌス毒素注射法)は保険適応されている治療で、効果は2~4ヵ月持続しますが、その期間は前後します。


効果がなくなると、再度ボトックス注射をする必要があります。


また、抗けいれん薬、抗コリン薬、抗不安薬、抗痙縮(けいしゅく)薬(筋弛緩薬)、漢方薬などを用いた薬物療法も補助的な治療として行します。

 

まぶたを持ち上げるクラッチメガネを使用する場合もある。

 

さらに、眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)の症状の特徴である羞明(まぶしさ)に対して遮光眼鏡をかけることで、眼瞼痙攣自体の症状が改善することも知られております。


以上の薬物治療や補助治療で改善が見られなければ、手術を検討する形となります。


まぶたの余分な皮膚を切除してたるみを解消し、まぶたを持ち上げる手術(眼瞼皮膚切除)や、けいれんの原因となっている眼輪筋を切除する手術(眼輪筋切除術)などが代表的である。

 

原因が完全に解明されたわけではない「眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」においては、治療法もさまざまなアプローチが行われてきました。

 

眼瞼痙攣は、まぶたを閉じる筋肉である「眼輪筋(がんりんきん)」が過剰に緊張して開きにくい状態であるともされ、眼輪筋を広範囲に切除する手術が行われたりします。

 

手術方法としては、眼瞼皮膚切除,眼輪筋切除術(広範囲切除術および部分切除術),Müller 筋縫縮術,前頭筋吊上げ術(frontal sling/suspension),皺眉筋切除術などで、いわゆる眼瞼下垂症手術と同等のものと言えます。

 

また、神経への外科的アプローチとしては、顔面神経切断術がありますが、再発が多く、顔のほかの部位が麻痺することがあるといった欠点があり、通常行われることはないと言えます。

 

また、眼瞼痙攣と似た疾患として、片惻顔面痙攣という疾患があり、この疾患の場合には、顔面神経が血管によって圧迫が原因の場合があり、その圧迫を手術により取り除くことで治ることが期待できます。

 

しかしながら、顔面痙攣の場合は、片側顔面痙攣よりも中枢の脳神経の異常と考えられており、結果として、顔面神経の微小血管減圧術を行ったとしても治らないと分かっております。 

 

しかし、いずれの手術を行ったとしても、一時的には改善することが多いのですが,大部分のケースで最終的には眼瞼けいれんの再発がみられ,結局はボトックス療法を再開せざるを得ない状態です。

 

特に、眼輪筋広範囲切除術を行っていた場合には、術後瘢痕組織へのボットクス注射となり、注射時の疼痛が術前よりも強くなってしまうので、注意が必要です。

 

さらには、眼瞼痙攣を眼瞼下垂症と誤診され、眼瞼下垂症手術を受けたケースや、眼瞼痙攣の治療として受けた手術を受けたケースでは、逆に、手術を受けたばかりに眼瞼痙攣が重症化するケースもあります。

 


■安易な眼瞼下垂症手術で引き起こされる術後眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)


 高田眼科の見解としては、特に、ミュラー筋への手術的操作が眼瞼痙攣を引き起こす、あるいは、悪化させる要因ではないかと考えております。


確かに、ボトックス注射が無効で、手の打ちようがない場合において、ミューラー筋リリース法を試みていくことは必要なのかもしれませんが、結果として、手術やりたがりの術者による失敗とも言える状態を診るにつけて、警鐘を鳴らすことも必要ではないかとも思います。 


しかし、眼瞼痙攣と同時に、腱膜性(加齢性)眼瞼下垂症を合併しているケースも多く、その場合に、眼瞼下垂症手術を行う際には、眼瞼痙攣の症状を抑えた状態での手術が望ましいと言えます。

 

したがって、眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)が合併している眼瞼下垂症手術の術前にボットクス注射を行った上で眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)の症状を抑え、ミュラー筋への侵襲を与えないように注意しつつ、高田眼科では眼瞼挙筋前転法にて行っております。

 

結果として、高田眼科(ひとみ眼科)の眼瞼下垂症手術後に眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)が重症化したという症例を目にすることはありません。


他院の修正手術のご相談をよく受けることがあるのですが、ミューラー筋リリース手術後に、術後眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)が悪化したため、下眼瞼の眼輪筋切除術を勧められ、疑問に思って、高田眼科にご相談を受けることが多くあります。

 

眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)診療ガイドラインにあるように、眼輪筋切除術を行ったとしても、再発することが多いと考えます。

 

それは、眼輪筋切除術を行うと、確かに、術後の知覚神経破壊による知覚鈍麻によって、一時的に術後眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)が抑えられるだけで、術後の知覚鈍麻が知覚神経の回復に従って治ることで、再発するのではないかと考えております。

 

したがって、高田眼科(ひとみ眼科)においては、眼瞼痙攣の治療は、ボツリヌス注射(Botox 注射)を第一選択としておりますので、術後、眼瞼痙攣の状態に合わせて、注射を行っております。

 

加えて日本では眼瞼痙攣に対する治療法として、保険適用として認められているものは、ボツリヌス毒素製剤の局所注射のみが唯一認められている治療法です。

 

したがって、その他の治療方法、つまりは、内服薬および外科的手術は、本来なら保険適用として認められておりませんので、注意が必要です。

 

また、眼瞼痙攣と眼瞼下垂症との鑑別は、主に眉毛の位置で判断することである程度出来ます。腱膜性(加齢性)眼瞼下垂症では、眉毛が代償性の前頭筋収縮のために眼窩上縁より上昇している状態になります。

 

逆に、眼瞼痙攣では、無意識にしかめっ面をしてしまうという症状との関係上、眉毛が眼窩上縁より下降します。

 

これをCharcot 徴候と呼ばれ、眼瞼痙攣の重要な徴候(サイン)だと言われております。

 

■意外に多い薬剤性眼瞼痙攣(眼瞼けいれん) 


 安定剤や睡眠導入剤、抗精神病薬が原因、誘因になっている場合が、意外に多いと言えます。


高田眼科では、眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)を疑った場合には、必ず、問診で伺うこととしております。


可能な限り服用を中止するなどの方法も行われており、実際に、服用を止めたら眼瞼痙攣の症状もなくなったという事例もみられています。

 

しかしながら、そういった薬剤のどちらかと言えば、禁断症状が眼瞼痙攣という症状であり、安易に自己判断で注視してしまうと、

 

過剰な離断症状、つまり、薬を一気に中断したことで、眼瞼痙攣が悪化してしまうこともあるので、必ず、主治医と相談の上、計画的に、漸減する(すこしずつ減らす)ことが大事だったりいたします。

 

■眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)の第一選択治療は、手術ではなく、「ボトックス注射治療」


 このような状況のなかで、最近、眼瞼痙攣への治療効果が注目されているのが「ボツリヌス療法」です。

 

これは、ボツリヌスA型毒素を製剤化した米国・アラガン社の「ボトックス」を局所へ注射し、緊張している筋肉を麻痺させる方法で、眼瞼痙攣の場合は 目の周囲に数ヵ所、注射するのが一般的です。

 

この方法の効果の高さは、国内外の臨床報告に表れており、日本でも1997年4月に厚生労働省が眼瞼痙攣の治療薬として認可しています。

 

保険診療で受けることができますが、費用は概ね、3割負担なら、約15000円程度と少し高額です。

 

また、眼瞼痙攣治療の有効で安全な実施を目指して策定された「眼瞼けいれん診療 ガイドライン(2011年度版)」でも、このボツリヌス療法が第一選択とされています。

 

治療の効果には個人差がみられ、効果が2ヶ月〜3ヶ月程度しか持続しないという欠点があるため定期的な再投与が必要とされますが、一方で1回の注射で症状が改善してしまう方も一定数みられます。

 

また、治療時間も短く、外来で行う治療方法で、入院は必要となりません。

ただ、ときには目の周囲の皮下出血、目が閉じにくく乾く状態、あるいはまぶたの上がりすぎ(兎眼/とがん)など注射後の副作用が起きる場合があります。

多くは一時的なもので、薬剤の効果と共に消えるものですが、念のため医師にご相談ください。

 

高田眼科の場合、臨床で使う針の中では、最大限に細い針(34G針)を使うことで、皮下出血のリスクを減らしております。

 

この針は、鍼灸の針治療で使うほど細い針ですので、注射時に皮下の毛細血管に当たる可能性がグッと下がりますので、説術後の皮下出血になることが少なく、程度も非常に軽いものとなります。

 

当然、細い針ですので、注射刺入時(針を刺した時)の痛みも、随分と少ないです。

 

 

さらに、注射の痛みについては、キシロカインテープ(テープ麻酔)やエムラクリーム(塗り麻酔)を行うことで、最大限痛みの少ないボトックス注射を行うようにしております。

 

  

この疾病の特長として、抑うつ感があると症状が悪化するため、精神的な安定が必要となり、自分自身でのメンタルケアはもちろん、向精神薬や抗てんかん薬などを内服する治療方法もとられます。

いずれにしても医師と相談しながら治療を継続することが大切です。

 


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