眼瞼下垂の基礎知識

眼咽頭遠位型ミオパチーの眼瞼下垂|症状・原因・治療

髙田 尚忠

眼咽頭遠位型ミオパチーは、まぶたの下がり、飲み込みにくさ、すねやふくらはぎの筋力低下が、ゆっくり進む病気です。1977年に日本で最初に報告され、2019年以降に原因の遺伝子が次々と見つかりました。眼形成外科医の立場から、現在分かっていることと、まぶたの治療を解説します。

  • 40歳前後に始まり、ほぼ全員にまぶたの下がりが出る:国内65人の研究では、97%にまぶたの下がり、98%に飲み込みや発音の障害がありました。
  • 原因の遺伝子が分かり、遺伝子の検査で診断できるようになった:国内ではLRP12という遺伝子のタイプが最多です。
  • まぶたは手術で上げられるが、手術成績の報告は少ない:ほかの筋肉の病気と同じく、角膜を守れる高さに控えめに上げます。
  • 誤嚥による肺炎に注意:一部の方では、呼吸や心臓の確認も必要です。

執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月

眼咽頭遠位型ミオパチーとは

目(まぶたの下がり、目の動きの制限)、のど(鼻に抜ける声、飲み込みにくさ)、顔、そして手足の先に近い筋肉が弱くなる病気です。多くは中年で始まり、進行はきわめてゆっくりです1。

親から子へ伝わる形式が多いものの、家族に同じ病気の人がいない例もよくみられます。症状がごく軽く、80代まで気づかなかった例も報告されています1。

原因の遺伝子

長く原因不明でしたが、2019年に、遺伝子の中の「CGG」という3文字の並びが異常に長く繰り返されることが原因と分かりました1。

国内で遺伝子のタイプが分かった人数(1978〜2021年)
LRP12(1型)70人
GIPC1(2型)12人
NOTCH2NLC(3型)7人

中国ではGIPC1やRILPL1(4型)が多く、国によって内訳が異なります1

まぶたと全身の症状

LRP12タイプの64人にみられた症状(日本)
飲み込み・発音98%
まぶたの下がり97%
手足の先の筋力低下83%
左右差のある筋力低下33%
誤嚥による肺炎17%
心臓の異常11%
人工呼吸器が必要8%

発症は平均41歳で、男性が62%でした。最初の症状は、まぶたの下がりと筋力低下が最も多く、37%でした。筋肉では、ふくらはぎが特に強く侵されていました2

心臓や呼吸に影響が出る方もいます

心臓の合併症や呼吸不全は多くはありませんが、起こることがあります2。年齢とともに、飲み込みの障害による誤嚥性肺炎に注意が必要です1。脳神経内科で定期的に確認を受けてください。

眼咽頭型筋ジストロフィーとの違い

この病気眼咽頭遠位型ミオパチー

すね・ふくらはぎなど、手足の先に近い筋肉が弱くなります。顔の筋肉の弱さも目立ちます1。

似た病気眼咽頭型筋ジストロフィー

太ももなど、体の中心に近い筋肉が弱くなります。発症の年齢はより高く、原因の遺伝子も別です1。

眼咽頭型筋ジストロフィーの解説

まぶたの治療

病気そのものを治す治療は、まだありません1。まぶたが視界をふさぐ場合は、手術で上げます。

この病気だけを集めた手術成績の報告は少なく、筋肉の病気による眼瞼下垂に共通する考え方で行います。

方法の選び方まぶたを上げる力で決める

力が残っていれば眼瞼挙筋の手術、ほとんど残っていなければ額の筋肉で上げる前頭筋吊り上げ術が選ばれます3。

高さ控えめに上げる

視界を確保できる高さにとどめ、角膜の傷を防ぎます。そのぶん、再び下がりやすくなります3。

この病気の注意点顔の筋肉も弱くなる

目を閉じる力や額の筋肉の力を、手術前に確認します。

院長コメント:当院では、眼瞼挙筋前転法を基本としています

まぶたを上げる力、目を閉じる力、目の乾きを手術前に確認し、角膜を守れる高さに調整します。前頭筋吊り上げ術は当院では行っていません。必要と判断した場合は、対応できる施設をご紹介します。

よくある質問

どうやって診断しますか。

脳神経内科で、筋肉の検査と遺伝子の検査を行います。国内の研究では、筋肉の検査を受けた42人全員に、この病気に特徴的な変化(縁取り空胞)がみられました2。

家族に同じ病気の人がいなくても、発症しますか。

はい。家族歴のない例もよくみられます。遺伝子の変化があっても症状が出ない人や、ごく軽い人がいるためと考えられています1。

視力は落ちますか。

見えにくさの主な原因は、まぶたが視界をふさぐことです。目の動きが制限されることもあります1。

手術は保険が使えますか。

基準を満たす後天性の眼瞼下垂は、保険診療の対象です。まぶたを上げる力が、生まれつきの眼瞼下垂と同じくらい大きく失われている場合は、自費診療になります。詳しくは「眼瞼下垂手術の費用」をご覧ください。

高田眼科の考え方

患者数の少ない病気のため、まぶたの手術は、脳神経内科での診断と全身の確認を踏まえて計画します。筋肉の病気による眼瞼下垂の全体像は「筋肉の病気による眼瞼下垂」をご覧ください。

まぶたの下がりと、飲み込みにくさ・脚の力の弱さが気になる方へ

まぶたの下がりの原因を見きわめ、全身の状態に合わせた治療方針をご提案します。

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執筆:髙田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長。岡山大学医学部卒業。眼科医・眼形成外科医として眼瞼下垂手術を専門とし、関連クリニックを含め年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています。

参考文献

PubMed収載論文をもとに作成しています。文献1・3は全文、それ以外は抄録を確認しています。

  1. Ishiura H. Recent progress in oculopharyngodistal myopathy research from clinical and genetic viewpoints. J Neuromuscul Dis. 2025;12(3):303-311. doi:10.1177/22143602251319164
  2. Kumutpongpanich T, Ogasawara M, Ozaki A, et al. Clinicopathologic features of oculopharyngodistal myopathy with LRP12 CGG repeat expansions compared with other oculopharyngodistal myopathy subtypes. JAMA Neurol. 2021;78(7):853-863. doi:10.1001/jamaneurol.2021.1509
  3. Park RB, Akella SS, Aakalu VK. A review of surgical management of progressive myogenic ptosis. Orbit. 2023;42(1):11-24. doi:10.1080/01676830.2022.2122514
このブログの執筆者
髙田尚忠
髙田尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂手術を中心に年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています 「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明すること心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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