後天性眼瞼下垂とは|原因の6タイプと危険なサイン、外傷性・治療の考え方

もともと普通に開いていたまぶたが、年月とともに、あるいはある時から下がってきた。これが後天性眼瞼下垂(こうてんせい がんけんかすい)です。大半は心配の少ないタイプですが、なかには脳や神経の病気のサインとして現れるものもあります。
- いちばん多いのは腱膜性:加齢やコンタクトレンズで、まぶたを上げる「すじ」がゆるむタイプ。手術で治せます。
- 急に下がった・物が二重に見えるときは、神経の病気を先に調べます。
- 治療はタイプで変わる:原因を見分けることが、治療の第一歩です。
執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月
後天性眼瞼下垂とは:先天性との違い

診察をしていると、「昔はもっと目が大きかった」「最近、目が細くなってきた」とお話しされる方が少なくありません。
加齢による眼瞼下垂は、単純にまぶたを持ち上げる筋肉が弱くなるだけでなく、筋肉の力をまぶたに伝える腱膜が緩むことが重要な原因です。
そのため、筋肉そのものの働きが比較的保たれていれば、腱膜を適切な位置に固定し直すことで、まぶたの開きを改善できる可能性があります。
原因は大きく6タイプ
シンガポールの専門施設で手術の相談に紹介された251人。オレンジは参考として示した先天性(文献1に収載)1

長年ハードコンタクトレンズを使用されている方や、白内障手術を受けた方に眼瞼下垂が見られることがあります。
ただし、これらの経験があるからといって、それだけが原因とは限りません。
加齢による腱膜の変化や皮膚のたるみなど、複数の要因が重なっていることもあります。
私は診察の際、過去のコンタクトレンズ使用歴や眼科手術歴だけでなく、現在のまぶたの状態を総合的に評価することを大切にしています。
すぐに受診してほしい危険なサイン
次のどれかに当てはまる場合は、早めに眼科を受診してください
- 数時間〜数日のうちに急に下がった
- 物が二重に見える、目が外側に寄っている
- 片方の瞳だけが大きい、または小さい
- 強い頭痛や目の奥の痛みを伴う
- 朝は軽く、夕方や疲れたときに極端に悪くなる
動眼神経麻痺では脳動脈瘤、ホルネル症候群では腫瘍や脳卒中が原因のことがあり、検査を急ぎます1。詳しくは「まぶたが下がる原因と受診の目安」をご覧ください。
手術の相談に紹介された眼瞼下垂のうち、神経が原因だった例の内訳(文献1に収載)1
多くの場合は心配の少ないタイプ

私が眼瞼下垂の診察で特に注意しているのは、まぶたが「いつから、どのように下がったのか」という点です。
数年かけてゆっくり下がった場合と、昨日まで普通だったまぶたが急に下がった場合では、考えるべき原因が異なります。
特に、突然の眼瞼下垂に物が二重に見える、瞳孔の大きさが左右で違う、強い頭痛があるといった症状を伴う場合は、動眼神経麻痺などの重大な疾患が隠れている可能性があります。
こうした場合には、眼瞼下垂手術を考える前に、速やかな原因精査が必要です。
外傷性眼瞼下垂:けがのあとに下がった場合
交通事故や転倒、まぶたの切り傷、頭部のけがのあとに起こる眼瞼下垂です。「外傷性」とひとまとめにされがちですが、実際には傷んだ場所によって4つに分かれ、見通しも治療も異なります4。
ガラスや刃物でまぶたを上げる筋肉が切れたもの。最も多く、回復に時間がかかります。
まぶたを強く引っぱられた、大きな内出血で伸ばされたなど。見通しが最も良いタイプです。
傷あとが硬くなり、まぶたの動きを妨げるもの。閉じにくさやドライアイに注意が必要です。
頭部や首のけがで、動眼神経や交感神経が傷んだもの。自然な回復を待つ期間が必要です。
米国の大学病院で20年間に治療された眼瞼下垂648人のうち、外傷によるもの4
けがの直後に、あわてて手術をする必要はありません。
多くのタイプで、しばらくすると自然に少し持ち上がってきます。神経の損傷では少なくとも3か月、改善が止まるまで待ってから手術を考えるとされています4。筋肉のすじが完全に切れた例で、9か月後に力が戻ってきたという報告もあります5。
目の手術のあとに下がった場合は「内眼手術後の眼瞼下垂」、ほかの病院での眼瞼の手術のあとに下がった場合は「眼瞼下垂の再手術(修正手術)」をご覧ください。
診察ではここを確かめます
- いつから、どのように下がったか
急か、ゆっくりか。けがや目の手術、コンタクトの使用歴。日によって変わるか。 - 目の動きと瞳の大きさ
二重に見えないか、左右の瞳の大きさが同じか。神経の病気を見落とさないための確認です。 - まぶたの高さと筋肉の力
まぶたの縁の位置と、まぶたを上げる筋肉の動く幅を測ります。 - 疲れやすさ
上を見続けたときに下がってこないか。重症筋無力症の手がかりになります3。 - 必要に応じて他科と連携
神経の病気が疑われる場合は、血液検査やMRIを脳神経内科・脳神経外科と連携して進めます。
ご自宅でできる確認方法は「眼瞼下垂のセルフチェック」をご覧ください。

眼瞼下垂の患者さんは、無意識におでこの筋肉を使ってまぶたを持ち上げていることがあります。
診察では、眉毛の位置や額の筋肉の使い方も確認します。普段は目が十分に開いているように見えても、眉を持ち上げる力を抜いていただくと、隠れていた眼瞼下垂が明らかになることがあります。
まぶたの開き具合だけでなく、眉や額との関係まで評価することが、適切な治療方針を考えるうえで重要です。
タイプ別の治療の考え方
手術の長持ちしやすさを左右するのは、術式よりも「原因のタイプ」です。
一度うまく上がった後に下がり直すリスクは、腱膜性以外のタイプで腱膜性の約2.4倍でした7。
費用と保険
後天性でも、まぶたを上げる力が先天性と同じくらい失われている場合や、仕上がりに審美的なご希望がある場合は自費診療です。

私は眼瞼下垂手術において、まぶたをしっかり開けられるようにすることはもちろん、まぶたの組織に必要以上の負担をかけないことも大切にしています。
特に、ミュラー筋と眼瞼挙筋をむやみに剥離せず、腱膜を固定する際にもミュラー筋への通糸をできるだけ少なくするよう心がけています。
手術後の違和感などを完全になくせるわけではありませんが、こうした細かな操作の積み重ねが、より負担の少ない手術につながると考えています。
よくある質問
ストレスでまぶたが下がることはありますか。
ストレスそのものが、まぶたのすじを傷めるという根拠はありません。疲れや寝不足で一時的に重く感じることはあります。ただし、日によって大きく変わる、夕方に極端に悪くなる、物が二重に見える場合は重症筋無力症などの可能性があるため、受診してください3。
片目だけ下がってきました。
腱膜性でも片目から目立ち始めることはよくあります。急に下がった場合や、瞳の大きさの違い、複視を伴う場合は、神経の病気を先に確かめます(「片目だけまぶたが下がる原因」)。
何科を受診すればよいですか。
まずは眼科で原因を見分けてもらうのが近道です。神経の病気が疑われれば専門科と連携します(「眼瞼下垂は何科を受診すべきか」)。
自然に治りますか。
腱膜性は自然には戻りにくい状態です。一方、外傷や目の手術のあと、ボトックス注射のあとなどは、時間とともに改善することがあります1,4(「眼瞼下垂を放置するとどうなる」)。
まぶたの下がりが気になる方へ
どのタイプの眼瞼下垂か、急いで調べるべき病気が隠れていないか。まず原因を見分けたうえで、必要な治療だけをご提案します。浜松と名古屋で、全国からのご相談をお受けしています。
参考文献
PubMed収載論文をもとに作成しています。すべて全文を確認しています。
- Bacharach J, Lee WW, Harrison AR, Freddo TF. A review of acquired blepharoptosis: prevalence, diagnosis, and current treatment options. Eye (Lond). 2021;35(9):2468-2481. doi:10.1038/s41433-021-01547-5
- Lee YG, Son BJ, Lee KH, et al. Clinical and demographic characteristics of blepharoptosis in Korea: a 24-year experience including 2,328 patients. Korean J Ophthalmol. 2018;32(4):249-256. doi:10.3341/kjo.2017.0118
- Donaldson L, Issa M, Dezard V, Margolin E. Low probability of myasthenia gravis in patients presenting to neuro-ophthalmology clinic for evaluation of isolated ptosis. Eur J Ophthalmol. 2023;33(1):524-529. doi:10.1177/11206721221107300
- Jacobs SM, Tyring AJ, Amadi AJ. Traumatic ptosis: evaluation of etiology, management and prognosis. J Ophthalmic Vis Res. 2018;13(4):447-452. doi:10.4103/jovr.jovr_148_17
- Czyz C, Blair K. Spontaneous improvement of levator palpebrae superioris function after traumatic transection. Trauma Case Rep. 2020;30:100375. doi:10.1016/j.tcr.2020.100375
- Park RB, Akella SS, Aakalu VK. A review of surgical management of progressive myogenic ptosis. Orbit. 2023;42(1):11-24. doi:10.1080/01676830.2022.2122514
- Cohen D, Passaro ML, Grachova E, et al. Long term risk of recurrence of ptosis repair: implications for surgical counseling and follow-up. Front Ophthalmol (Lausanne). 2026;5:1689010. doi:10.3389/fopht.2025.1689010
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