眼瞼下垂の基礎知識

難しい修正手術:眼瞼下垂症こぼれ話

Dr.髙田

1週間前に、当院にて手術をさせて頂いた患者様のお話です。
(この方のご好意により、お写真を使用させて頂けました。本当に有り難うございました。)

この方は、40年前に他院で手術を受けた方で、段々と右眼の瞼が下がり始め、当然、いろいろと形成外科、眼科を受診されたのですが、修正手術を引き受けてくださるところがなく、途方に暮れていたところを当院を知り、遠くから受診してくださいました。

力一杯、大きく開瞼をした状態。

この方の手術の難しさは、二重瞼の切開線の位置が広すぎるということと、また、その切開線が深く、物凄くガッチリと付けられてしまっている、言い換えれば激しく瘢痕化している状況でした。

前医の手術は、修正を考えないアグレッシブな手術だと思います。

このケースの難しいポイントとして、

  1. 前医の切開線がガチガチの線なので、位置をずらして、新しく二重の線を設定できない。
  2. 皮膚の余剰がないので、前医の切開線を完全に除去することができない。
  3. これだけ、凄い瘢痕なので、瞼の構造が激しく壊れている可能性が強い。眼を閉じても、線が深く刻まれています。
  4. 今回は、右眼のみの手術で、左眼にどこまで近づけられるか??

以上が挙げられます。

修正手術の方向性としては、瞼の開瞼幅を左眼に近づくように変えるとともに、二重瞼の幅を狭くすることとなります。

そこで、先ず、前医の瘢痕化を除去することを諦め、切開線は、前医の位置と同一として、瞼を挙げることに集中し、瞼を引き上げる力を利用することで、二重幅を狭めることとしました。

他院の修正手術の難しさは、前医の手術内容がわからないので、手術中に内部構造の変化を読みきることです。

まさに、修正手術は楽譜のない音楽の即興のようなものとなります。

加えて、瘢痕化した組織は、出血が多く、困難を極めます。

言うは易く行うは難し!

術中は、当然、出血も多く、それを丁寧に止血をしましたが、挙筋腱膜は瘢痕組織化し、術中に開瞼運動を行なって頂くことで、開瞼ベクトルを生み出せるポイントを探し、瞼板に縫合をし縫合しました。手術時間は25分でした。

そして、これが、本日の一週間後の抜糸直後の写真となります。

皮下出血も非常に少なく、抜糸したので、どんどん、腫れが収まり、二重の幅も狭くなり、よい状態になります。(普段は、もっと、狭いラインをデザインしてますので、こんなに広くすることはありませんが・・・)

御本人は、この時点でさえ、随分と眼が開きやすくなったと大変喜んでくださいました。

一ヵ月後には、二重の幅は、半分ぐらいになり、眼の開きも、もう少し改善し、手術を行わなかった左眼により近づくとご説明いたしました。

他の先生方も、言われるように、再手術は非常に難しいものだと認識しております。

しかしながら、「難しいから、できない。」ではなく、難しいことに挑戦をしていくことは、大事なことだと思います。

手術には、難しい、簡単の色分けができません。

それは、保険診療の報酬が一定であるという縛りがあるということもありますが、手術は患者さんという人を相手にしているものです。

ですので、私がベストを尽くしたとしても、その患者さんが納得する結果でなければ、石を投げられるようになってしまうこともあるからです。

ことさら、修正手術は、手術に対して不信感を抱かれている方が多いからこそ、難しいのです。

それでも、他院の修正について、最初から断るのではく、リスク、複数回の手術の必要性の負担を納得されているという前提で、できるだけ引き受けるようにしております。

- 【眼瞼下垂】延べ2万眼瞼以上の手術経験 -
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