眼瞼下垂の基礎知識

「眼瞼下垂」の症状と原因 

眼瞼下垂の症状と原因を解説したアイキャッチ画像|視野障害・眉を上げる癖・加齢・コンタクトレンズ・先天性などを図で説明
髙田 尚忠

眼瞼下垂の症状と原因は、「まぶたが下がる」という見た目の変化だけではありません。

視野が狭くなる、眉を上げて見る、額にしわが増える、目が疲れるといった症状が現れることもあります。

眼瞼下垂は、上まぶたの縁が正常より低い位置にある状態です。原因は、まぶたを上げる腱膜・筋肉・神経のどこに問題があるかによって分かれ、成人では腱膜のゆるみによる眼瞼下垂が最も多くみられます[1][5]。

このページでは、眼瞼下垂でみられる代表的な症状と、加齢・コンタクトレンズ・神経や筋肉の病気・先天性などの原因について、眼科医の立場からわかりやすく解説します。

眼瞼下垂の症状

眼瞼下垂の主な症状|見た目・視野・代償動作・疲れや痛み・気持ちへの影響を示した図
症状内容
見た目眠そうに見える。左右差が出る。二重の線が高くなる[1][2]
視野上のほうが見えにくい。軽度でも検査で視野の欠けが確認される[1][2]
代償の動作眉を上げる。額に深い横じわができる。あごを上げて見る[2][3]
疲れ・痛み夕方にまぶたが重くなる。頭痛、肩こり、目の疲れ[3][7][8]
気持ちの面外見への不安、気分の落ち込み[2]

視野と生活への影響

まぶたが瞳孔にかかると、上方の視野が欠けます[1]。

影響を受けやすいのは、読書、テレビを見る、目より高い所の物を取る、細かい手作業といった動作です。手術を受けた50人の調査では、これらの動作が手術前より有意に改善しました[1]。

米国眼科学会の報告は、手術によって視力、周辺の視野、生活の質が改善すると結論しています。

改善が見込める目安は、MRD-1(次項)が2mm以下、上方の視野が12度以上欠けている、あごを上げて見ている、下を向くと読みにくい、目が疲れる、などです[9]。

眉を上げる、あごを上げる

下がったまぶたを補うために、額の筋肉(前頭筋)で眉を引き上げ、頭を後ろに傾けるようになります[2]。

額の中央の深い横じわと、高く上がった眉は、この代償が続いているサインです[3]。

夕方に症状が強くなるのも、同じ理由です。眉を上げ続けた額の筋肉が疲れるためで、ほとんどの眼瞼下垂に共通します[3]。

頭痛と肩こり

眼瞼下垂の手術を受けた44人の調査では、63.6%に緊張型頭痛がありました。

頭痛による生活への支障を表す点数は、手術後に平均60.0から42.3へ改善し、まぶたの下がりが強い人ほど改善の幅が大きくなりました[7]。

日本の高齢者22人の調査でも、手術の3か月後に、見えにくさ、目の疲れ、まぶたの重さ、頭痛、肩こりが有意に改善しています[8]。

気持ちへの影響

眠そうな、あるいは左右非対称な外見は、不安や抑うつを高めることがあります。

その程度は、斜視など外見に影響する他の目の病気と同等と報告されています[2]。

重症度の目安

黒目の中心からまぶたの縁までの距離(MRD-1)は、正常では4〜5mmです[1]。

下がりの幅で、軽度(1〜2mm)、中等度(3〜4mm)、重度(4mm超)に分けます[4]。測り方は「眼瞼下垂のセルフチェック」をご覧ください。

髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

当院において、眼瞼下垂の診察でよく見る所見としては、二重幅の変化、上まぶたのくぼみ、三重まぶたなどがあり、診断の大きな手掛かりとなります。
加えて、患者さんが訴える症状として、目の奥の痛みなどの眼精疲労症状も重要です。

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眼瞼下垂の原因と種類

生まれつきの「先天性」と、後から起こる「後天性」に分かれます。後天性は、原因によって5つに分類されます[1]。

種類原因特徴割合
腱膜性まぶたを上げる腱膜が伸びる、薄くなる、外れる筋肉の力は比較的保たれる。二重の線が高くなることがある60.2%
外傷性けがによる筋肉・腱膜・神経の損傷きっかけが明らか11.2%
機械性腫瘍などの重みしこり、腫れ8.8%
神経原性動眼神経や交感神経の障害、重症筋無力症複視、瞳孔の左右差などを伴う5.6%
筋原性まぶたを上げる筋肉そのものの病気筋肉の力が弱い。両目がゆっくり進む4.0%

割合は、眼形成外来に紹介された251人の調査によります(残る10.4%は先天性)[5]。

腱膜性眼瞼下垂の原因

腱膜性は、次の要因で起こりやすくなります[1]。

  • 加齢:年齢とともに増えます。韓国の40歳以上、約2万1千人の調査では、全体で13.5%、40代で5.4%、70歳以上で32.8%に眼瞼下垂がみられました。高血圧、糖尿病、体格指数の高さとも関連していました[10]。
  • コンタクトレンズ:日本の30〜60歳の女性の研究では、ハードレンズの使用者は眼瞼下垂のリスクが約20倍でした。患者の平均使用期間は29.6年で、対照群の23.2年より長期でした[6]。複数の研究をまとめた解析では、ソフトレンズでもリスクが約8倍でした。ただし、ソフトレンズの根拠は90人の研究1件です[11]。
  • 目の手術:16研究、2,856眼をまとめた解析では、目の手術の後に11.4%で眼瞼下垂が起きていました[12]。
  • ボツリヌス毒素の注射:目の周りへの注射の後、一時的にまぶたが下がることがあります[1]。

東アジア人の腱膜性眼瞼下垂

欧米の教科書では、腱膜性の特徴は「二重の線が高い」「腱膜が外れている」とされます。

しかし、韓国人162人の手術所見では、二重の線が高かったのは19.7%、腱膜が外れていたのは13%にとどまりました。

一方で、まぶたを上げる筋肉への脂肪の入り込みが90.6%にみられ、その程度が強いほど、年齢が高く、下がりが強く、筋肉の力が弱くなっていました[13]。

髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

日本人の手術所見としても、高齢の方で、瞼の厚みが薄い特徴のあるケースで、挙筋の脂肪変性や眼瞼挙筋の筋力の低下を認めことが多いと言えます。

神経や筋肉の病気による眼瞼下垂

頻度は低いものの、全身の病気が原因のことがあります。

神経原性の内訳は、動眼神経麻痺が35.7%、重症筋無力症が28.6%でした[5]。

筋原性には、慢性進行性外眼筋麻痺、眼咽頭型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィーがあります[1]。

急に下がった場合や、物が二重に見える場合は、早急な受診が必要です。「片目だけまぶたが下がる原因」で、受診を急ぐサインを解説しています。

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先天性眼瞼下垂

まぶたを上げる筋肉が、生まれつき十分に形成されていないために起こります[4]。

まぶたが瞳孔を覆うことや乱視が原因で、14.9%に弱視を合併します[4]。

お子さんの場合は、眼科での経過観察が欠かせません。詳しくは「先天性眼瞼下垂」をご覧ください。

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眼瞼下垂に見えて、そうではないもの

皮膚のたるみや眉の下がりは、まぶたの縁の位置が正常であれば眼瞼下垂ではありません[1]。治療法が異なるため、「まぶたのたるみと眼瞼下垂の違い」で見分け方を確認してください。

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まとめ|眼瞼下垂の症状と原因は一人ひとり異なります

眼瞼下垂では、まぶたが下がるだけでなく、上方の視野が狭くなる、眉を上げる、額にしわが増える、目が疲れるといった症状がみられることがあります。

成人では加齢などによる腱膜性眼瞼下垂が多くみられますが、神経や筋肉の病気が原因となることもあります。特に、まぶたが急に下がった場合や、物が二重に見える、瞳孔の左右差があるといった症状を伴う場合には注意が必要です。

「以前より目が開きにくくなった」「まぶたが重い」と感じる場合は、見た目だけで判断せず、眼瞼下垂の原因を確認することが大切です。

眼瞼下垂の症状と原因についてよくある質問

眼瞼下垂の症状や原因について、診察の際によくご質問をいただく内容をまとめました。 まぶたの下がり方には個人差があり、なかには神経や筋肉の病気が関係しているケースもあります。

Q 眼瞼下垂の初期症状には、どのようなものがありますか?
A

初期には、「以前より目が開きにくい」「まぶたが重い」といった症状のほか、 眉を上げて見る、額のしわが増える、二重の幅が広くなる、 まぶたが三重になるなどの変化がみられることがあります。

まぶたそのものの変化に気づく前に、写真を見て 「以前より目が小さくなった」と気づく方もいます。

Q 眼瞼下垂の原因は加齢だけですか?
A

いいえ。成人では加齢に伴って、まぶたを持ち上げる筋肉につながる 腱膜が伸びたり、ゆるんだりするタイプが多くみられますが、 原因は加齢だけではありません。

コンタクトレンズの長期使用、過去の眼科手術や外傷、 神経・筋肉の病気などが関係する場合もあります。 また、生まれつきまぶたを持ち上げる力が弱い 「先天性眼瞼下垂」もあります。

Q コンタクトレンズの使用は眼瞼下垂の原因になりますか?
A

コンタクトレンズの長期使用、特に着脱時に上まぶたを繰り返し引っ張ることは、 後天性眼瞼下垂との関連が指摘されています。

ただし、コンタクトレンズを使用している方すべてに 眼瞼下垂が起こるわけではありません。 年齢や使用期間、まぶたの状態などを含めて総合的に判断します。

Q 眼瞼下垂は片目だけに起こることもありますか?
A

はい。眼瞼下垂は両目だけでなく、片目だけに目立つこともあります。 左右で腱膜のゆるみ方が異なる場合や、先天性眼瞼下垂、 神経の異常などでも左右差が生じます。

特に、それまで左右差がなかったのに 急に片方のまぶただけが下がった場合には、 原因を確認することが重要です。

Q 眼瞼下垂で頭痛や肩こりが起こることはありますか?
A

まぶたが開きにくくなると、無意識に眉を上げたり、 額の筋肉を使って目を開けようとすることがあります。 そのため、目の疲れや額の緊張を自覚する方もいます。

一方で、頭痛や肩こりにはさまざまな原因があります。 頭痛や肩こりがあるからといって、 すべてを眼瞼下垂だけで説明できるわけではありません。

Q まぶたが急に下がってきた場合は、すぐに受診した方がよいですか?
A

急にまぶたが下がった場合には、早めの眼科受診をおすすめします。

特に、物が二重に見える、瞳孔の大きさが左右で違う、 目が動かしにくい、強い頭痛などを伴う場合には、 動眼神経麻痺など神経系の病気が隠れている可能性もあるため、 緊急性を含めた評価が必要です。

Q 眼瞼下垂かもしれないと思ったら、何科を受診すればよいですか?
A

まずは眼科での診察をおすすめします。 眼瞼下垂では、まぶたの位置だけでなく、視力や眼球運動、 瞳孔、左右差、眼瞼挙筋の働きなどを確認し、 原因を見極めることが重要です。

「年齢のせいだろう」と自己判断せず、 まぶたの下がりや見えにくさが気になる場合には、 一度眼科でご相談ください。

参考文献

  1. Bacharach J, Lee WW, Harrison AR, Freddo TF. A review of acquired blepharoptosis: prevalence, diagnosis, and current treatment options. Eye (Lond). 2021;35(9):2468-2481. PMID: 33927356
  2. Nichols KK, Malloy KA, Karpecki PM, et al. Topical review: an update of diagnostic and management algorithms for acquired blepharoptosis. Optom Vis Sci. 2022;99(3):230-240. PMID: 35058403
  3. Latting MW, Huggins AB, Marx DP, Giacometti JN. Clinical evaluation of blepharoptosis: distinguishing age-related ptosis from masquerade conditions. Semin Plast Surg. 2017;31(1):5-16. PMID: 28255284
  4. Wu P, Ma J, Zhang T, Ma D. Advances in the genetics of congenital ptosis. Ophthalmic Res. 2022;65(2):131-139. PMID: 34969027
  5. Lim JM, Hou JH, Singa RM, Aakalu VK, Setabutr P. Relative incidence of blepharoptosis subtypes in an oculoplastics practice at a tertiary care center. Orbit. 2013;32(4):231-234. PMID: 23662688
  6. Kitazawa T. Hard contact lens wear and the risk of acquired blepharoptosis: a case-control study. Eplasty. 2013;13:e30. PMID: 23826433
  7. Bahceci Simsek I. Association of upper eyelid ptosis repair and blepharoplasty with headache-related quality of life. JAMA Facial Plast Surg. 2017;19(4):293-297. PMID: 28253391. doi:10.1001/jamafacial.2016.2120
  8. Shirakawa Y, Uemura K, Kumegawa S, et al. Safety and pitfalls of blepharoptosis surgery in elderly people. Arch Plast Surg. 2023;50(5):446-451. PMID: 37808334. doi:10.1055/s-0043-1770082
  9. Cahill KV, Bradley EA, Meyer DR, et al. Functional indications for upper eyelid ptosis and blepharoplasty surgery: a report by the American Academy of Ophthalmology. Ophthalmology. 2011;118(12):2510-2517. PMID: 22019388. doi:10.1016/j.ophtha.2011.09.029
  10. Kim MH, Cho J, Zhao D, et al. Prevalence and associated factors of blepharoptosis in Korean adult population: the Korea National Health and Nutrition Examination Survey 2008-2011. Eye (Lond). 2017;31(6):940-946. PMID: 28338663. doi:10.1038/eye.2017.43
  11. Hwang K, Kim JH. The risk of blepharoptosis in contact lens wearers. J Craniofac Surg. 2015;26(5):e373-e374. PMID: 26102541. doi:10.1097/SCS.0000000000001876
  12. Wang Y, Lou L, Liu Z, Ye J. Incidence and risk of ptosis following ocular surgery: a systematic review and meta-analysis. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2019;257(2):397-404. PMID: 30203103. doi:10.1007/s00417-018-4130-6
  13. Kim CY, Lee SY. Distinct features in Koreans with involutional blepharoptosis. Plast Reconstr Surg. 2015;135(6):1693-1699. PMID: 25742524. doi:10.1097/PRS.0000000000001280

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このブログの執筆者
髙田尚忠
髙田尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂手術を中心に年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています 「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明すること心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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