点眼しても、いっこうに治らないドライアイ、実は眼瞼痙攣(がんけんけいれん)!?
眼瞼痙攣って、どんな疾患?
「眼瞼下垂(がんけんかすい)」と同じように瞼(まぶた)が上がりにくくなるものの、眼瞼下垂症に認められる動眼神経、眼瞼挙筋、眼瞼挙筋腱膜などに異常がない「偽眼瞼下垂(ぎがんけんかすい)」につながる原因疾患に「眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」があります。
一般的に痙攣(けいれん)と言うと、自分の意志とは関係なく筋肉がピクピクと動くイメージがあります。
これを「不随意の筋肉の収縮」と言いますが、眼瞼痙攣は、このように目の周囲がピクピク動くといった症状のほか、「光がやたらとまぶしくなる」「目を開けているのがつらい」「目がしょぼしょぼする」「まばたきが増える」「目が乾いた感じがする」などを自覚します。
今回は、この眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)にスポットを当てて、説明をしてみたいと思います。
1. はじめに — 眼瞼痙攣の基本理解
眼瞼痙攣(blepharospasm)とは、まぶたを動かす筋肉(※眼輪筋など)が無意識に過剰に収縮し、まばたきが増加したり、目が開けにくくなったりする状態を指します。ひどい場合はまぶたが閉じてしまい、日常生活に支障をきたすこともあります。
単なる「ピクピク」レベルの眼瞼ミオキミアとは異なり、眼瞼痙攣は意志で止められず重症化する可能性がある真の疾患であり、放置せず適切な診断・治療が重要です。
2. 眼瞼痙攣の原因と発症メカニズム
✅ 主な原因
- 原因は明確に解明されていないが、大脳の運動制御系の異常が関与すると考えられている。局所的な神経回路の異常が、まばたき制御に影響を与える。
- 遺伝的素因や加齢、環境因子、眼精疲労との関連も指摘される。
- 一部は薬剤や他の神経疾患、姿勢・ストレスとの関連があるケースも報告される。
- 眼瞼下垂手術などの眼瞼手術後にも発生することもあります。

眼瞼痙攣は、「中枢神経系の運動制御異常による不随意収縮(ジストニア)」と説明されますが、これは簡単に言うと、「脳からまぶたへの命令の出し方がうまくいかなくなっている状態」です。
私たちの体は、脳が司令塔となって筋肉に「今は動かして」「今は休んで」と指示を出しています。まぶたも同じで、本来は必要なときだけ閉じたり、まばたきをしたりするようにコントロールされています。
ところが眼瞼痙攣では、この司令が乱れてしまい、本当は閉じる必要がない場面でも、脳が「閉じろ!」という命令を何度も出してしまいます。
これは、壊れたリモコンが勝手にテレビの電源を切ったり音量を変えたりするのと似ています。
自分の意思とは関係なく、まぶたがギュッと閉じてしまうのです。

✅ ドライアイや眼精疲労との関係
軽度・初期の眼瞼痙攣ではドライアイと似た症状(しょぼしょぼ感、異物感、光過敏など)が現れることがあり、誤診されることが多いです。実際、ドライアイ治療が効かない場合に眼瞼痙攣が背景にある例もあります。

眼瞼痙攣は、もう一つ「ドライアイ」と間違えられることも多いのです。
ドライアイとは「乾燥性角結膜炎」とも言うように、涙の不足などで目が乾いてしまい、傷や障害が発生する疾病ですが、
「目がしょぼしょぼする」などの症状がドライアイと混同されるため、眼瞼痙攣だったのにドライアイの治療をされて一向に症状が改善されないという事例も多いと言えます。
ドライアイと診断され,種々のドライアイ治療に抵抗する患者の 57%(ドライアイと診断された患者の 8.6%)が眼瞼けいれんであったという報告もあるぐらいです。
3. 代表的な症状 — 見逃さない診断ポイント
初期症状
- まばたきが増える
- 目がしょぼしょぼする
- まぶしさを感じる
- 目が開けにくい感じがする
これらはドライアイでも見られるため区別が難しいことがあります。
進行症状
- 意志に反して目が閉じてしまう
- 指でまぶたをこじ開けないと開かない
- 日常生活・運転で支障が出る(機能的失明状態)
4. 眼瞼痙攣と類似疾患の鑑別
眼瞼ミオキミア
- ピクピク程度で自然治癒
- 開瞼障害はない
- 比較的軽症で一過性
片側顔面痙攣(Hemifacial Spasm)
- 顔面神経の血管圧迫が原因
- 片側顔面全体の痙攣
- 眼瞼痙攣とは異なる神経症状がみられる

5. 診断のポイント
眼科専門医による視診・病歴確認が中心で、眼瞼の痙攣のパターン・持続時間・トリガー(光、ストレスなど)を詳細に評価します。神経学的評価を加える場合もあります。
眼科での詳細評価例
- 瞼の動きの観察
- ドライアイ・眼表面検査
- 他の神経症状の有無のチェック
6. 治療戦略 — 科学的エビデンスに基づく対処法
眼瞼痙攣とは、脳の命令システムのトラブルによって、まぶたの筋肉が必要以上に収縮してしまい、自分の意思とは関係なく目が閉じてしまう病気なので、ある意味、脳の疾患という言い方ができます。
自分でコントロールできない動きを「不随意運動」と呼びますが、くしゃみやしゃっくりのように、止めたくても止められない動きと同じで、眼瞼痙攣では「目を開けていたいのに、勝手に閉じてしまう」という状態が起こります。
したがって、脳の異常な活動を抑えるというアプローチ、脳と瞼の間での神経伝達へのアプローチ、そして、異常信号の受け取り側の瞼へのアプローチ、自覚症状を緩和させるというアプローチとなります。
① ボトックス(Botulinum toxin)療法 — 第一選択
ボトックス注射は、脳の異常な神経伝達が瞼に届くのをブロックするという治療となります。
眼輪筋を標的にした最も効果の高い治療であり、当院でも臨床効果を実感しています。筋収縮を一時的に弱めることで、まばたき頻度・開瞼障害を改善します。
*持続期間:通常2〜4ヶ月程度
*保険診療が適応されるケースもあります。
② 点眼薬・生活環境の改善
- ドライアイ点眼(涙液補充)
- 照明・強い光回避
- 睡眠・ストレス管理
※これらは症状緩和に寄与しますが、単独で治癒するものではありません。
③ 薬物療法
抗不安薬・抗コリン薬・筋弛緩薬などを補助的に使用することがありますが、単独効果は限定的です。
④ 手術療法(重症例)
重度・長期例では、眼輪筋の一部を切除するミオセトミーや他の神経外科的手技が選択されることがあります。
手術をすることで、眼瞼痙攣が余計に悪化するケースもあるので、注意が必要です。
7. 日常生活でできるケア
- まばたき習慣の意識
- 画面作業時の休憩ルール(20-20-20)
- 習慣的なドライアイケア
- 適度な睡眠・ストレスコントロール
これらは症状の「増悪因子」を軽減するのに有効です。
8. まとめ:早期受診の重要性
眼瞼痙攣は進行性で日常生活に支障をきたすことがある疾患です。
以下のような症状が続く場合は、眼科専門医への早期受診を推奨します:
✅ ドライアイ治療しても改善しない
✅ まぶたが勝手に閉じる
✅ 日常生活の妨げになっている

眼瞼痙攣は“ドライアイっぽい”症状で始まることが多く、見逃されやすい疾患です。適切な鑑別と治療で多くの方が改善しています。気になる症状があれば、早めの受診をおすすめします。
目に関する悩みで困ったら、まずは専門医に相談してみてください。
「目が開けにくくなった」「まぶたが瞳にかかって視界が狭い」「眠そうと言われる」 そんなお悩み、放っておかずに一度ご相談ください。
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