眼瞼下垂を放置するとどうなる?未治療で失われる視界と日常生活への影響|治療の必要性とリスク

2026年1月26日 修正・更新
「まぶたが少し下がってきた気がする」
「最近、目が開けづらく、夕方になると特に疲れる」
「眠そうに見えると言われるが、年齢のせいだと思っている」
このような症状があっても、眼瞼下垂(がんけんかすい)をそのまま放置している方は非常に多いのが現状です。
しかし眼瞼下垂は、単なる見た目の問題ではありません。
放置することで視機能の低下、慢性的な不調、日常生活への支障が徐々に進行していく疾患です。
本ページでは、
- 眼瞼下垂とはどのような状態なのか
- 放置・未治療によって起こる具体的な症状とリスク
- なぜ早期治療が重要なのか
- 治療を検討すべきタイミングとはいつか
について、眼瞼下垂手術を専門に行う眼科医の立場から、医学的根拠をもとに分かりやすく解説します。
眼瞼下垂とは?|「まぶたが下がる」だけの病気ではありません
眼瞼下垂とは、上まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋やミュラー筋)の機能が低下し、十分に目を開けられなくなる状態を指します。
眼瞼下垂の主な原因
- 加齢による眼瞼挙筋腱膜のゆるみ
- 長年のコンタクトレンズ使用
- 目をこする癖
- 外傷や手術後の影響
- 先天性(生まれつき)
多くの方は後天性・加齢性の眼瞼下垂であり、気づかないうちに少しずつ進行します。
眼瞼下垂を放置すると起こる代表的な症状

① 視野が狭くなる(上方視野障害)

眼瞼下垂になると、まぶたが下がって視野が狭くなり、上方や外側が見えづらくなります。
軽度の場合は瞳孔(黒目)にまぶたが少し被さる程度ですが、放置するとさらにまぶたが垂れ下がっていき、まぶたが視界の一部を物理的に遮る状態になります。
- 信号機が見えにくい
- 階段や段差が怖い
- 人や物にぶつかりやすくなる
眼瞼下垂による視野狭窄は、上下方向の視野の狭さとなります。
例えば、運転中には、前の車両を中止していると、高い位置にある信号が見えにくくなりますし、歩行時においては、足元の状況の認識が甘くなり、足の踏み外したり、躓いたりして、交通事故や転倒などのリスクが高まると言えます。

高齢者の転倒は、腰や大腿骨の骨折などを引き起こし、それをきっかけに寝たきりに繋がってしまうので、注意が必要です。
上方視野の障害は、本人が気づきにくく、検査をして初めて自覚するケースも多いのが特徴です。
② 眼精疲労・頭痛・肩こりが慢性化する

視界を確保しようとして、
- 無意識に眉を上げる
- おでこに力を入れる
- 顎を上げる
といった代償動作が続くと、眼精疲労だけでなく、頭痛・肩こり・首の痛みにつながります。
これらの症状は、マッサージや薬では根本的に改善せず、
原因が眼瞼下垂にある場合、治療しない限り続いてしまいます。
③ 目が疲れやすく、集中力が続かない

目が疲れやすくなることも眼瞼下垂の代表的な症状です。
重く開きづらいまぶたを無理に上げようとして、前頭筋や眼瞼挙筋に持続的に力を入れるためです。
つまり、眼瞼下垂があると、常に「目を開ける努力」をしている状態になります。
目の疲れや眼精疲労を放置すると、身体的および精神的な不調につながるほか、ほかの眼疾患を引き起こすリスクも高まってしまいます。
- 仕事中に集中が続かない
- 夕方になると極端に疲れる
- 本やスマホを見るのがつらい
こうした症状が続くことで、仕事や学業のパフォーマンス低下にもつながります。
④ 顔の印象が変わり、実年齢より老けて見える

眼瞼下垂は、
- 眠そう
- 疲れている
- 不機嫌そう
といった印象を与えやすく、見た目の変化による心理的ストレスを感じる方も少なくありません。
これは美容目的の話ではなく、機能低下が表情に現れている結果といえます。
眠たそうな見た目になる
まぶたが瞳孔の大部分を覆うようになると、眠たそうな表情になったり、目つきが悪くなったりと、目元の印象が大きく変化してしまいます。
仕事や私生活で人と会う機会が多い方にとっては、大きなストレスとなるおそれがあります。
当院でも、同僚や上司から、仕事中、眠そうとの指摘を受けたことで手術を決心したという患者様からのお話をよく耳にします。
額のしわが増える
眼瞼下垂はまぶたを上げる筋肉である眼瞼挙筋が衰えている状態のため、無意識のうちに額の筋肉(前頭筋)を使って目を開くようになります。
眉毛を上げてものを見るようになり、常に額の筋肉を動かしていると、徐々に額のしわが増えて定着してしまう可能性があります。
特に、眼瞼下垂症の代償によるおでこのシワは、ボトックスで改善するのですが、逆に、前頭筋が弛緩することで、眼瞼下垂症の状態となり、瞼が重くなったと自覚することが多くあります。
そのため、おでこのシワ改善の根本的な治療として、ボトックスだけでなく、眼瞼下垂症手術を検討されると良いと考えます。
肩こりや頭痛が生じる
眼瞼下垂になると、眼瞼挙筋を補佐している前頭筋が常に緊張している状態となり、首周辺の筋肉まで力が入って肩こりを引き起こすと考えられています。
筋肉の緊張が続くと、血流が悪化して頭痛につながる場合もあります。
また、ミュラー筋は自律神経の一つである交感神経に支配されているため、ミュラー筋のバランスが崩れると、便秘や手足の冷えなどのトラブルが生じると考える眼瞼下垂専門医師もいます。
未治療で進行するとどうなる?|放置によるリスク
① 眼瞼下垂は自然に治ることはありません

眼瞼下垂は、基本的に進行性の疾患です。
「しばらく様子を見れば治るかも」
「目薬で何とかなるのでは」
と思われる方もいますが、筋肉や腱膜の機能低下が原因のため、自然治癒は期待できません。
② 無理な代償動作が癖になる

長期間放置すると、
- 眉を上げる癖
- 額のシワ
- 顎を突き出す姿勢
が固定化し、姿勢や表情のクセとして残ることもあります。
③ 転倒・事故のリスクが高まる

視野障害が進行すると、
- 段差でつまずく
- 夜間の運転が不安
- 人混みで危険を感じる
など、日常生活の安全性にも影響を及ぼします。
「軽度だから大丈夫」は本当?|早期治療の重要性

眼瞼下垂は、軽度の段階で治療する方が、身体への負担が少なく、結果も安定しやすいという特徴があります。
- 重度になるほど代償動作が強くなる
- 長年の癖が残りやすくなる
- 治療後の違和感が出やすい
そのため、
「生活に支障が出始めた時点」=治療を検討すべきタイミングと考えるのが適切です。

眼瞼下垂症を専門としていないクリニックで、眼瞼下垂の相談すると、軽度だから手術しなくて良いと言われてしまうケースがあります。
結局、眼瞼下垂症を手術されていない医師に相談しても、手術治療の選択に及び腰になって、まともに相談になっていない場合もありますので、眼瞼下垂症の相談は、専門に診療しているクリニックでのご相談が大事だと考えます。
進行するほど治療が難しくなる
また、眼瞼下垂は症状が進行するほど、治すことが難しくなっていきます。
人間の身体は、老化により、筋肉が痩せていきます。
つまりは、瞼を引き上げる筋肉である眼瞼挙筋も筋力が少なくなり、眼瞼下垂症は重症化しやすいと言えます。
眼瞼下垂症手術は、瞼の筋肉を助ける手術であるため、筋肉そのものの力が足りなければ、手術による改善も少ないと言えます。
また、瞼の皮膚や眼輪筋も老化により変化し、瞼のタルミにもつながり、タルミを除去するための処理も必要となります。
軽度であれば幅広い手術方法のなかから選択できますが、重度になると手術による効果も少なくなります。
そういった状態に対して、十分な結果を出そうとすると、無理な手術となり、難易度も上がります。
つまり、眼瞼挙筋機能が弱いからと、強く固定しすぎると、三角目(テント目)になったり、二重のラインが不自然になったり、左右差が生じたりと、思いどおりの仕上がりにならないリスクが高まるため注意が必要です。
眼瞼下垂は早めの対処がおすすめ

眼瞼下垂を放置しても、命にかかわる重大な病気につながる危険性はありません。
しかし、放っておくとどんどん進行して、日常生活に大きな影響を及ぼす場合があるため、悪化させないための対策が必要です。
「まぶたが重い」「まぶたがたるんできた」と感じる方は、まぶたへの刺激を避けたり、眼瞼挙筋を鍛えたりして、眼瞼下垂の進行を防ぎましょう。
また、眼瞼下垂が疑われる場合は、早めに眼瞼下垂症を専門とする眼科医・形成外科医に相談することも重要です。
眼瞼下垂の治療方法について
保険診療で行う眼瞼下垂手術
保険診療の眼瞼下垂手術は、
まぶたの開きを改善し、視機能障害を回復させることを目的とした医療行為です。
- 視野障害
- 眼精疲労
- 日常生活への支障
が認められる場合、保険適用となる可能性があります。
※美容目的(たるみ取り・重み取り)が目的に含まれる場合は、原則として保険適用外となります。
「切らない」「簡単に治る」という情報に注意
インターネット上には、
- 切らずに治る
- 注射だけで改善
- マッサージで治る
といった情報も見られますが、
眼瞼挙筋機能が低下している眼瞼下垂では、根本治療にはなりません。
治療方法の選択は、正確な診断のもとで慎重に行うことが重要です。

眼瞼下垂症手術の第一選択は、眼瞼鋸筋前転法だと思いますが、その手術難易度は、眼瞼挙筋機能が十分にあるか?どうか?になります。
眼瞼挙筋機能に問題があると、幾ら、眼瞼下垂症手術で眼瞼挙筋腱膜の位置を修正しても、筋肉自体に瞼を持ち上げられるだけの筋力がないため、眼瞼下垂症の十分に改善ができません。
したがって、老化が進んで、眼瞼挙筋機能に問題が出てくると、手術の結果に影響しますので、早い時期での手術が望まれます。
眼瞼下垂を進行させないために気をつけたいこと
眼瞼下垂は自然には治らないため、根本的な改善には手術が必要です。
しかし、症状が軽度の場合、日常生活のなかでまぶたにかかる負担を軽減すれば、進行を防げる可能性があります。
詳しくは、下記のブログ記事にて、詳しく説明をさせていただいております。

まぶたへの刺激を減らす

眼瞼下垂の進行させないためには、まぶたへの刺激を極力減らしましょう。
洗顔時にまぶたを擦らない、アイプチやつけまつげの使用を控える、濃いアイメイクは避けるなどの対策が有効です。
花粉症やアトピー性皮膚炎で目のかゆみがあっても、できるだけ目の周りをかかないように注意しましょう。
また、まぶたを強くこすったり引っ張ったりするマッサージは逆効果です。
挙筋腱膜にダメージを与え、眼瞼下垂を悪化させるおそれがあります。
コンタクトレンズの使用方法を見直す

コンタクトレンズを使用している方は、着用時間や頻度、取り外し方法を見直してみましょう。
とくに、ハードコンタクトレンズは眼瞼下垂のリスクを高めるといわれています。
まばたきによってまぶたの上下運動を繰り返すと、角膜上に装着されたハードコンタクトレンズとの間に摩擦が生じ、挙筋腱膜やミュラー筋が徐々に伸びてしまうためです。
また、コンタクトレンズの装着時や取り外す際にまぶたを引っ張る行為もよくありません。
下まぶたを下げて付ける・はずすほか、眼鏡に変えたり、コンタクトレンズの着用時間を減らしたりしてまぶたへの負担を軽減しましょう。
ハードコンタクトレンズを使用している方は、ソフトコンタクトレンズに変更するだけでも挙筋腱膜へのダメージを抑えられます。
長時間のVDT作業を控える

VDT(Visual Display Terminal)作業とは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの端末を使用する作業です。
デジタル機器のディスプレイ画面を長時間見続けると、ドライアイ・目のかすみ・視力低下などの症状を引き起こすVDT症候群につながり、眼瞼下垂の原因となります。
普段からVDT作業が多い方は、長時間の作業を控えたり、休憩をとって目を定期的に休めたりしてまぶたへの負担を軽減しましょう。
1時間の作業ごとに10〜15分程度の休息時間を設けるのが効果的だといわれています。
眼瞼挙筋のトレーニングをおこなう
多くの場合、眼瞼下垂は眼瞼挙筋の衰えによって発症するため、眼瞼挙筋を鍛えると眼瞼下垂の予防につながります。
- 目を閉じて眉毛を下げ、額の力を抜きます。
- 眉毛が動かないように、手のひらで額全体を押さえます。
- 両目を限界まで大きく見開き、5秒間キープしてください。
- ゆっくりと目を閉じてリラックスします。
- ①〜④を1セットとして、1日に数回、気づいたときにおこなうと効果的です。
ただし、先天性の眼瞼下垂で生まれつき眼瞼挙筋が発達してない場合や、すでに眼瞼挙筋の機能が著しく低下している場合は、トレーニングの効果はほとんど見込めません。
そして、進行した眼瞼下垂症をトレーニングで回復することは、非常に難しいと言え、手術を検討した方が良いとも言えます。
医師と相談し、眼瞼下垂の状態を把握したうえで取り入れるとよいと考えます。
もっとも効果的な予防方法は眼瞼下垂手術

先述したように、眼瞼下垂が軽度であれば日常生活にそれほど影響は出ないため、とくに不便を感じていなければ手術を受けなくてもよいでしょう。
しかし、どれほど気をつけて生活していても、加齢とともに眼瞼挙筋は衰えていくため、将来的に症状が悪化するリスクは避けられません。
先に紹介した対策方法により眼瞼下垂の進行はある程度防げますが、完治することはありません。
そのため、眼瞼下垂の症状が見られたら、できるだけ早く眼科で受診し、軽度のうちに専門医へ相談することを推奨します。
また、生活や仕事に支障がある場合や、肩こり・頭痛といった不調がある場合は症状がすでに進行している可能性が高いため、早めに手術を検討しましょう。
まとめ|眼瞼下垂は「放置しないこと」が何より重要です
眼瞼下垂は軽度だからといって放っておくと、目の開きにくさが悪化するほか、目元の印象が変化したり、肩こりや頭痛といった身体的なトラブルを引き起こしたりするおそれがあります。
進行を防ぐために、まぶたへの負担をできるだけ避けて生活しましょう。
また、重症化する前に眼瞼下垂手術を受けたほうが負担を軽減できるほか、手術の際の負担も少なくすみます。
「まだ大丈夫」と思っている今こそが、
一度きちんと診察を受ける最適なタイミングかもしれません。
- 眼瞼下垂は自然に治る病気ではない
- 放置すると視野障害や慢性不調につながる
- 軽度のうちに治療する方が負担が少ない
- 正確な診断と適切な治療選択が重要
眼瞼下垂を放っておくとどうなるかについて、よくある質問
- 眼瞼下垂を放置すると視界が狭くなりますか?
-
眼瞼下垂が進行すると上まぶたが目を覆い、視野が狭くなる可能性があります。
- 眼瞼下垂を放置すると目が疲れやすくなりますか?
-
眼瞼下垂により、目を開けるために余分な力が必要となり、目の疲れや頭痛の原因になることがあります。
- 眼瞼下垂は放置すると治りますか?
-
眼瞼下垂は自然に治ることはありません。
- 眼瞼下垂を放置すると、視力が低下しますか?
-
眼瞼下垂自体は視力低下の直接的な原因ではありませんが、重度の場合は視野が妨げられ、見えにくくなる可能性があります。
- 年齢のせいなら治療しなくてもいいですか?
-
年齢が原因であっても、
生活の質が低下している場合は治療を検討する価値があります。
- 手術が怖くて踏み出せません
-
不安があるのは当然です。
まずは診察で状態を正しく知ることが大切です。
参考文献
SRIDHARAN, G. V., et al. A community survey of ptosis of the eyelid and pupil size of elderly people. Age and ageing, 1995, 24.1: 21-24.
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CAHILL, Kenneth V., et al. Functional indications for upper eyelid ptosis and blepharoplasty surgery: a report by the American Academy of Ophthalmology. Ophthalmology, 2011, 118.12: 2510-2517.
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