ドライアイ(乾性角結膜炎)
ドライアイ(乾性角結膜炎)(Dry eye, Keratoconjunctivitis sicca)とは、目の表面を潤す涙液の量や質に問題が生じることで発症する疾患です。
代表的な症状としては、目の乾燥感や異物感、かすみ目などがあります。
視覚障害や失明に至る病気ではありませんが、重症化すると角膜に傷がつく可能性もあるため早期発見と治療が大切です。
当記事では、ドライアイ(乾性角結膜炎)の病型や症状、原因や治療法について詳しく解説します。
この記事の著者
名前 / Name
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長|ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務める。2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。
ドライアイ(乾性角結膜炎)の病型
現代社会においてドライアイ(乾性角結膜炎)は急増傾向にあり、目の健康を脅かす重大な疾患の一つと認識されつつあります。
中年女性に多くみられる疾患であり世界中での有病率は5~34%とされていますが、現在の日本では800万~2,200万人、ドライアイの患者さんがいるといわれています1)2)。
病型 | 特徴 |
---|---|
涙液減少型ドライアイ | 涙液の生産量が少ない |
蒸発亢進型ドライアイ | 涙液が目の表面にとどまらずにすぐ乾いてしまう |
ドライアイの定義
ドライアイは、「さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある」と定義されています3)。
涙液層は、目の表面を乾燥から守る、角膜に酸素や栄養を届ける、菌や異物の侵入を防ぐなどの役割を持っていて、私たちの目が正常に機能するために欠かせないものです。
- 油層:涙の表面をカバーして蒸発を防ぐ
- 水層:涙の主成分であり栄養や酸素が含まれる
- ムチン層:涙が目の表面に均一に分布するのを助ける作用がある
涙液層の量や質が低下すると異物感や乾燥感を認めやすくなり、角膜や結膜の細胞が傷ついたり炎症を起こしたりするリスクが増します。
涙液減少型ドライアイ
涙液減少型ドライアイは、涙腺の機能低下や破壊などによって涙液の生産量が少なくなっている状態です。
正常な涙液の生産量は1日に2~3mlですが、これよりも量が少なくなると目が乾きやすく、角膜や結膜の表面の細胞に障害が生じやすくなります。
涙液減少型ドライアイの原因には、シェーグレン症候群や加齢などが挙げられます。
蒸発亢進型ドライアイ
涙が眼球の表面にとどまらずに、すぐに乾いてしまう状態を蒸発亢進型ドライアイと呼びます。
涙の蒸発が亢進すると目の表面が乾燥状態になり、異物感や充血、目の疲れや充血などを認めやすくなります。
主な原因は、マイボーム腺※1の機能低下、コンタクトレンズの使用、パソコンやスマートフォンの長時間使用などです。
※1マイボーム腺:まつ毛の生え際より内側に位置する腺。涙液層のうち油層となる油分を分泌する器官で、開口部は上まぶたに約30~40カ所、下まぶたに約20~30カ所存在するとされている4)。
ドライアイ(乾性角結膜炎)の症状
ドライアイ(乾性角結膜炎)の代表的な症状は、目の乾燥感、異物感や痛み、充血、かすみ目などです。
症状 | 特徴 |
---|---|
目の乾燥感 | 目が乾いてショボショボする |
異物感や痛み | 目にゴミが入っているようにゴロゴロする |
白目の充血 | 白目の血管が拡張して赤くなる |
かすみ目 | 物がかすんで見える |
光に対するまぶしさ | 角膜損傷が起きると光が異常にまぶしく感じる |
目の乾燥感
目の乾燥感はドライアイの最も典型的な症状です。涙液量の減少によって目の表面が乾燥して不快に感じます。
長時間のパソコン作業や読書など、とくに目を酷使する際に乾燥感が強くなるケースが多いです。
重症度 | 自覚症状・影響 |
---|---|
軽度 | 目の表面のわずかな乾燥を感じる程度 |
中等度 | 目の乾燥が明らかで、頻繁にまばたきをしたくなる |
重度 | 目の乾燥が非常に強く、目を開けているのが辛い |
異物感
ドライアイでは、目の中に砂やゴミが入ったようなゴロゴロとした異物感が認められる場合があります。
涙液量が減少して目の表面が乾燥し、まぶたと眼球表面の摩擦が増加するために起こる現象です。
異物感が強いと目をこすりたくなってしまいがちですが、角膜や結膜に傷がついてしまうのを避けるために目をこすらないよう注意しましょう。
白目の充血
目の充血もドライアイでよく見られる症状の一つです。
涙液量の減少により目の表面が乾燥することで、目の血管が拡張し充血が起こります。目の疲れや目の奥の圧迫感を伴うケースも多いです。
重症度 | 目の外観 |
---|---|
軽度 | 目の一部に血管の拡張が見られる |
中等度 | 目の半分程度に血管の拡張が見られる |
重度 | ほぼ全体的に目が赤くなっている |
かすみ目
かすみ目もドライアイの自覚症状として知られていて、目の表面が乾燥して光の乱反射が起こるために目がかすむようになります。
物がぼやけて見えたり焦点が合わせにくかったり、人によっては仕事や運転などの日常生活に支障をきたす場合もあります。
重症度 | 日常生活への影響 |
---|---|
軽度 | わずかに目のかすみを感じる程度で、日常生活には支障がない |
中等度 | 目のかすみが明らかで、読書などの作業がしづらい |
重度 | 目のかすみが強く、日常生活に大きな支障がある |
光に対するまぶしさ
ドライアイによって角膜が損傷すると、光を異常にまぶしく感じるようになります(専門的な言葉で羞明と呼びます)。
光の透過経路の一つである角膜(黒目の表面)に細かな傷がつき、光が散乱して網膜の周辺部に当たることで引き起こされる症状です。
ドライアイ(乾性角結膜炎)の原因
ドライアイ(乾性角結膜炎)は多くの原因が絡み合って発症する疾患(多因子性疾患)です。
内科的疾患から引き起こされるもの、薬の副作用、目の手術に伴うもの、生活習慣や目の使い方によるものなど、幅広い原因が挙げられます。
涙液減少型ドライアイの原因
原因 | 特徴 | 涙液分泌への影響 |
---|---|---|
シェーグレン症候群(SS) | 涙腺や唾液腺などの全身の外分泌腺に慢性的な炎症が起こる自己免疫疾患。進行すると外分泌腺が破壊される。 | 強い |
スティーブンス-ジョンソン症候群(SJS) | 目や鼻、口や外陰部などの粘膜のただれ、全身の皮膚に紅斑や水疱などが高熱とともに発生する。皮膚粘膜眼症候群とも呼ばれる。 | 強い |
加齢 | 健康な人であっても、加齢とともに涙液の分泌量が減少すると知られている5)。 | 中程度 |
抗コリン作用を持つ薬剤 | 高血圧の治療薬、向精神薬、抗ヒスタミン薬などの副作用として涙液の分泌量低下が挙げられる。 | 中程度 |
ストレス | 涙液の分泌は副交感神経によってコントロールされているが、過度なストレスで交感神経が優位になるため涙液の分泌量が減る。 | 弱い~中程度 |
シェーグレン症候群やスティーブンス-ジョンソン症候群といった涙腺や目の粘膜に重大な影響を及ぼす疾患だけでなく、加齢やストレスなど、誰にでも起こり得るものが原因となっている場合もあります。
蒸発亢進型ドライアイの原因
「ドライアイ=涙液の量が減少して目が乾いてしまう」というイメージがありますが、十分な量の涙があっても、涙液の質の低下や角膜の異常などがあると涙液が蒸発しやすくなるため、ドライアイが起こり得ます。
涙液が眼球の表面にとどまらずにすぐ乾いてしまう蒸発亢進型ドライアイの主な原因は、大きく分けて3つです。
- 涙液の質の低下
- 角結膜上皮の異常
- 眼瞼(まぶた)の機能や形態の異常
涙液の質の低下
マイボーム腺の機能が低下すると油分の分泌量が減って涙液の蒸発量が増える。
感染や炎症のほか、まぶたの縁についたアイメイクでマイボーム腺が塞がれる可能性もある。
結膜の胚細胞(ゴブレット細胞)から分泌されるムチンといった粘液の産生量が減少すると目が乾きやすくなる。
ドライアイと喫煙の関係はさまざまな研究がされているが、タバコの煙が目に入ると油層の脂質過酸化が引き起こされて涙液の蒸発速度が速くなる6)。
また、喫煙者では非喫煙者に比べて涙液層が不安定であるとの研究結果もある7-9)。
コンタクトレンズ表面の涙液層は角膜上の涙液層に比べて2倍近く薄くなる速度が速い(コンタクトレンズを使用していない人よりも涙液層が破壊されやすい)10)。
マイボーム腺の機能低下やムチン産生異常、喫煙やコンタクトレンズの使用によって涙液内容の異常が起こったり涙液層のバランスが崩れたりすると、ドライアイを発症するリスクが高まります。
角結膜上皮の異常
点眼薬に含まれる防腐剤のベンザルコニウムは角膜の細胞膜に作用してたんぱく質を変性させるため、角膜に傷がつく副作用がある(角膜上皮障害)。
短期使用では問題とならないが、長期使用ではリスクが増す。
冬の空気の乾燥や冷暖房の影響で目が乾燥すると、まぶたと眼球の摩擦が増えて角結膜が傷つきやすくなる。
結膜(白目の部分)が緩んでシワができている状態。
下まぶたと眼球の溝が浅くなると涙液が溜まりにくく、涙が目からこぼれ落ちたり蒸発したりしやすくなる。
角膜や結膜上皮に異常が起きたり傷がついたりすると、涙液が蒸発しやすくなるためドライアイを引き起こす可能性があります。
眼瞼の機能や形態の異常
まぶたの縁が外側に反っている眼瞼外反や上まぶたが過度に挙上している眼瞼後退などによってまぶたが閉じられない状態。
角膜が乾燥したり傷ついたりする。
ディスプレイやキーボード、タッチ画面入力機器など(VDT)を用いた作業を指す。
まばたき回数が減少する傾向があり、眼精疲労や目の乾燥などを引き起こしやすくなる。
コンタクトレンズを装着するとまばたきの回数が減る可能性があり、涙液が眼球全体に行き渡らないため目が乾燥しやすくなる。
一般的なドライアイは環境要因が大きいと考えられていて、とくに問題視されているのがパソコンやスマホの凝視といった過度なVDT作業です。
混合型の存在
必ずしも涙液減少型と蒸発亢進型のどちらか一方が原因となっているわけではなく、両方の病型・原因が絡み合って起こる混合型も一般的です11)。
たとえば、加齢による涙液分泌量の低下とコンタクトレンズによる涙液の質の低下、ストレスによる涙液分泌の減少と過度なVDT作業によるまばたきの減少などが挙げられます。
ドライアイ(乾性角結膜炎)の検査・チェック方法
- 眼不快感、視機能異常などの自覚症状
- 涙液層破壊時間(BUT)が5秒以下
上記の1.と2.のどちらも有するものをドライアイとする。
問診による自覚症状の確認
問診では、ドライアイの特徴的な症状の有無を確認します。目の乾燥感、異物感、疲労感、かすみ、充血などの訴えがあるときは、ドライアイが疑われます。
また、コンタクトレンズの使用状況や全身疾患の有無などについても確認します。
涙液の量や質の検査
- シェルマー試験:涙液量の測定
- 涙液層破壊時間(BUT)測定:涙液の安定性(質)の評価
ドライアイの代表的な検査として、シルマー試験と涙液層破壊時間(BUT)測定があります。
シルマー試験は、ろ紙を下眼瞼(下まぶた)に挿入し、5分間で濡れたろ紙の長さを測定する検査方法です。正常値は10mm以上で、5mm以下の場合に陽性となります。
一方、涙液層破壊時間(BUT)測定はフルオレセインで涙液を染色して目を開けた状態を維持し、スリットランプ※2で観察する検査方法です。まぶたを開けた直後は一様に染色されていますが、時間が経過すると涙液層が崩壊して黒く見える部分が現れます。
※2スリットランプ:細隙灯顕微鏡とも呼ばれ、眼科の基本的かつ汎用性の高い検査機器。光の束を目に当てながら特殊な顕微鏡で目の前面を観察する。
涙液の質が低下すると、涙液層が最初に崩壊するまでの時間が短くなります。
この時間が5秒以下になると涙液の不安定性が示唆され、ドライアイの可能性があります(正常な涙液層崩壊時間は通常10秒以上です)。
※ただし、シェルマー試験陽性者に比べて涙液層破壊時間(BUT)測定陽性者の割合が高い、涙液層破壊時間(BUT)測定が正常でシェルマー試験が陽性のドライアイ患者がほとんどいない、といった点からドライアイの診断をするうえでシェルマー試験を行う必要性は低いとされています3)。
角結膜の評価
- フルオレセイン染色:角結膜上皮障害の有無を確認
- ローズベンガル染色:結膜上皮障害の有無を確認
角結膜の状態を評価するために、フルオレセイン染色検査やローズベンガル染色検査が行われます。
通常の観察でははっきりしない角結膜上皮の障害でも、フルオレセイン(黄色の色素)で染色してからスリットランプで青色の光を当てると明瞭になります。
ローズベンガル染色は、赤い色素であるローズベンガルを点眼して結膜上皮障害を調べる検査です。角膜上皮の傷やムチン層が欠損して乾いている部分が赤く染色されます。
ドライアイ(乾性角結膜炎)の治療方法と治療薬について
ドライアイ(乾性角結膜炎)の主な治療方法は、点眼薬と涙点プラグの2つです。
点眼薬
ドライアイに対する点眼薬の使用は、眼表面の層別治療(TFOT)が行われます。
TFOTは、角結膜や涙液層といった眼表面の異常部位によって用いる点眼薬を選択する治療方法です。
具体的には、人工涙液やジクアホソルナトリウム(商品名:ジクアス)、レバミピド(ムコスタ)などが処方されます。
人工涙液は涙液に近い性質を持つ点眼薬で、ドライアイの治療では頻回使用されるために防腐剤が含まれていないものを使用する場合が多いです。
レバミピドにはムチンを産生する作用や角膜上皮障害の改善効果があり、目の表面の炎症を抑える可能性があると考えられています。
点眼薬 | 適応例 |
---|---|
人工涙液 | 涙液減少型ドライアイ、蒸発亢進型ドライアイ |
ジクアホソルナトリウム | 涙液減少型ドライアイ |
レバミピド | 蒸発亢進型ドライアイ |
ステロイド | 蒸発亢進型ドライアイ(角結膜に炎症のあるもの) |
涙液プラグ
涙の蒸発を防ぐ目的で、涙点プラグを挿入する治療法もあります。
涙点プラグは名前の通り涙点※3に栓をする小さな器具で、とくに液層の水分保持に有効とされています。
※3涙点:涙液の排出経路の入り口(小さな開口部)で、目頭側の上まぶたと下まぶたに1つずつある。
涙点プラグの大きさや形状にはいくつかの種類がありますが、シリコン製のものや液体コラーゲンを用いたものが一般的です。
点眼麻酔をしたうえで、数分ほどの短時間で処置が可能。プラグを挿入している限りは効果が持続する。
液体を涙点に注入して目を15分ほど閉じていると体温でゼリー状に固まる。2カ月ほどで分解されるため、効果が薄れてきたら再注入が必要。
生活習慣の改善や悪化原因の除去
ドライアイは生活習慣が元になって引き起こされている人が多いため、生活習慣の改善や悪化原因の除去も大切です。
- コンタクトレンズの使用を控える
- VDT作業や運転をする際には適度な休息をとる
- エアコンの設定変更や加湿器の使用を検討する
- 市販の点眼薬や洗眼薬を乱用しない
- 目の疲労を取り除くために目を温めるのも有効
ドライアイ(乾性角結膜炎)の治療期間
ドライアイ(乾性角結膜炎)は治療の継続で症状のコントロールが可能ですが、ほとんどの人は完治が難しいです。
※完治とは、治療を全くしなくても良い状態を指します。
ドライアイの症状が改善するまでの治療期間
症状 | 治療期間の目安 |
---|---|
軽度 | 数週間〜数カ月 |
中等度 | 数カ月〜1年 |
重度 | 1年以上 |
軽度のドライアイであれば、点眼薬の使用により、数週間から数カ月程度で症状は改善へ向かっていきます。
一方、重症のドライアイや全身疾患が原因となっているドライアイは、治療に数カ月から数年を要する場合もあります。
症状が改善しても治療をやめてしまうと再び目の乾燥感や異物感などが現れる可能性がありますので、定期的な受診と継続的な点眼薬の使用が推奨されます。
ドライアイの予後を良くするための注意点
- 定期的な眼科受診と治療の継続
- 生活習慣の改善(目の過度な使用を避ける、まばたきを意識的に行うなど)
- 全身疾患がある人は、その治療も並行して行う
治療と同時に生活習慣を見直して、目に負担がかかりすぎないような工夫が大切です。
薬の副作用や治療のデメリットについて
ドライアイ(乾性角結膜炎)の治療には、副作用やデメリットが伴います。
点眼薬の副作用
点眼薬 | 副作用 |
---|---|
人工涙液 | ごく稀にまぶたの腫れや充血、かゆみ |
ジクアホソルナトリウム | 目の刺激感、目やに、かゆみ、充血 |
レバミピド | 苦味、かすみ目 |
ステロイド | 眼圧の上昇、緑内障、感染のリスク増加 |
ドライアイの治療によく用いられる点眼薬では、一時的な目の刺激感、充血、かすみ目などの副作用が現れるケースがあります。
レバミピド(ムコスタ)は点眼時に苦味を感じやすい治療薬です。苦味の感じ方には個人差がありますが、点眼前にコーヒーを飲んで苦味を軽減する方法もあります。
長期使用に注意が必要な点眼薬がステロイドで、眼圧が上昇したり感染症のリスクが増加したりといった副作用がありますので、必ず医師の指示にしたがって点眼するようにしてください。
涙点プラグのデメリット
- 慣れるまでの違和感
- 涙点プラグの脱落や移動
- 涙点や涙小管の損傷
- 老廃物や異物が排出されないために起こるアレルギー
涙点プラグは涙点を塞ぐために老廃物が目に蓄積しやすくなり、とくにコンタクトレンズを使用している人はアレルギーを起こすリスクが増します。
副作用を軽減するためには、上下1カ所ずつ左右で計4カ所ある涙点をすべて塞ぐのではなく、上下どちらかのみにプラグを挿入して様子をみる方法が有効です。
保険適用の有無と治療費の目安について
ドライアイ(乾性角結膜炎)の治療は基本的に保険が適用されますが、保険適用外の治療をなる場合もあります。
保険適用の治療と治療費の目安
治療内容 | 1カ月あたりの治療費の目安 |
---|---|
診察・検査 | 3,000~6,000円 |
点眼薬 | 数百円~数千円(選択する薬による) |
シリコン涙点プラグ | 3,500~12,000円(種類、本数による) |
液体コラーゲン涙点プラグ | 6,500~7,500円 |
保険適用のドライアイの治療には、診察や検査、点眼薬や涙点プラグが含まれます。
現在、保険による治療が可能なシリコン製の涙点プラグは6種類です12)。
涙点プラグを行うときは、どの種類を使用するか、何箇所に挿入するかによって費用は上下しますが、診察や検査を合わせても1カ月2万円以下で収まるのが一般的です。
保険適用外の治療について
マイボーム腺機能不全が原因のドライアイに対してIPL治療※4が選択される場合がありますが、保険が適用されず全額が自己負担となります。
※4 IPL治療:美容皮膚科で使用されるIPL(光)を利用した治療方法。マイボーム腺機能不全に効果があるという研究結果が複数あり、ドライアイも改善できる13)14)。
IPL治療は医療機関によって価格の幅が大きいですが、1回8,000円から3万円程度です。
ただし、効果が実感できるまでには複数の治療が必要ですので、トータル的にはさらに費用が必要です。
詳しい治療費や治療内容については、主治医やかかりつけの眼科にお問い合わせください。
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2) 岡庭豊:病気がみえるvol.12眼科 第1版, メディックメディア, 2019, pp215.
3) 日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016年版)/厚生労働省
4) マイボーム腺機能不全診療ガイドライン/日本眼科学会
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6) Kirkham PA, Spooner G, Rahman I, Rossi AG. Macrophage phagocytosis of apoptotic neutrophils is compromised by matrix proteins modified by cigarette smoke and lipid peroxidation products. Biochem Biophys Res Commun. 2004;318:32–7.
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11) Craig JP, Nichols KK, Akpek EK et al. (2017): TFOS DEWS II definition and classification report. Ocul Surf 15: 276–283.
12) ドライアイ診療ガイドライン/日本眼科学会
13) Rolando Toyos, Neel R Desai, Melissa Toyos, Steven J Dell. Intense pulsed light improves signs and symptoms of dry eye disease due to meibomian gland dysfunction: A randomized controlled study. 2022 Jun 23;17(6):e0270268.
14) Rolando Toyos, William McGill, Dustin Briscoe. Intense pulsed light treatment for dry eye disease due to meibomian gland dysfunction; a 3-year retrospective study. 2015 Jan;33(1):41-6.
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