診断の話

先天性眼瞼下垂の治療「マーカスガン現象」

2020.6.26  記事内容を修正・更新しました。


◼︎治療について

 水分を吸ったりあくびをするなど、口を開けたときに下アゴを動かす行為と同時に、上まぶたがピクピクと上の方に意識とは無関係に動く「マーカス・ガン現象」。(参考動画

 

顎を動かす神経と瞼を動かす神経が先天的に混線した状態によって起こると考えられております。

脳から発せられた顎を動かす信号が、神経の混線によって、まぶたに伝わり、顎の動きに合わせて、まぶたがピクピクと動いてしまう状態です。

 

動画でもわかるように、先天性で特に新生児期や乳児期に目立つ症状であるため、母親が授乳中などにこの症状に気づくことが多いようですが、生後数年を経過するうちに 自然治癒につながる場合があることも知られています。

 

したがって、積極的に手術をせず、そうした自然治癒に結びつくような傾向がないか見守るというアプローチを選択することもあります。

ただし、必ず自然治癒するという保証がないことも事実です。

 

弱視を合併することが多く、眼瞼下垂症手術よりも、この弱視に対しての対応を積極的に行うことが必要で、手術をしないとしても、定期的に弱視治療を受けるための通院が必要となります。

 

行われる治療としては、屈折性弱視の治療であり、症状のない目をカバー(アイパッチ)を行います。

 

このアイパッチ治療は、良い方の目(健眼)にアイパッチをすることで悪い方の目(弱視眼)の視力発達は促す治療です。

 

適正な時期(7〜10歳まで)に対処しなければ、弱視は治療不可能になったり、治療効果が十分出ずに、一生、弱視が固定化してしまう可能性があります。

 

その際に、屈折異常があれば、その屈折異常を矯正する眼鏡を装用することも必要となります。

 

眼瞼下垂性の弱視が疑われる場合には、早期に手術を行うことが求められます。

また、弱視以外にも、斜視を合併することがあります。

 

この場合には、Double elevator palsy(DEP)と呼ばれ、眼球を動かす筋肉のうちの上直筋と下斜筋の二つが麻痺することで単眼性上転障害(眼球を上に向けることができない)状態となります。

 

この斜視に対しては、斜視手術と眼瞼下垂症手術を行うことで治療することが検討されます。

 

つまり、マーカスガン現象を起こしている眼瞼下垂症治療は、小児のうちに積極的に眼瞼下垂症手術を行う前に、まずは、弱視、斜視などの視機能の障害を取り除くことが優先され、眼瞼下垂性の遮蔽(しゃへい)弱視が認められるような重症眼瞼下垂症において検討されます。

 

マーカスガン現象に合併する眼瞼下垂症への治療方法は、基本的には手術しかないのですが、マーカス・ガン現象のような先天性の「眼瞼下垂(がんけんかすい)」の場合、実施する時期にはさまざまな考え方があります。

 

できるだけ早期にすべきという立場や、思春期を迎える前、あるいは小学校入学前という年齢にポイントを置く場合もありますが、一般的には3~4歳以降をすすめるケースもありますが、高田眼科としては、思春期以降を念頭において、ご相談させて頂いております。

 

小児のうちに仮に眼瞼下垂がみられても、軽度〜中等度であれば、下向きの際は目が開いており、通常はアゴを上げて見ているため、視機能は正常に発達できるという観点からです。

 

また、思春期になれば、ある程度、手術に関して理解することができ、局所麻酔による手術が可能となるからという背景もあります。

 

ただ、片方の目で見る習慣がつくと遮蔽(しゃへい)性の弱視になることもありますので、注意が必要となります。

このような事情から、視機能を守るため生後6ヵ月頃から弱視や斜視の診察を定期的に受けることをおすすめします。

 

つまり、眼瞼下垂の程度が強く、十分にまぶたが上げられず光刺激が網膜に届かないことにより視力の発達が妨げられる(眼瞼下垂症による)遮蔽性の弱視、「視性刺激遮断性弱視(しせいしげきしゃだんせいじゃくし)」は避けなければなりません。

 

また、先に述べさせて頂いたように斜視が認められた場合は、眼瞼下垂と同時に手術を行うことになります。

◼︎手術について


 このような治療への基本的な考え方に基づいて、マーカスガン現象に対する眼瞼下垂の手術は主として、見た目の外見を整える目的で行います。

逆に、顎の動きにリンクする瞼のピクピクするような動きを消失させることは出来ません。

 

手術は両眼の場合で1〜2時間程度で終わりますが、過矯正(矯正のし過ぎ)や低矯正(矯正の不足)には十分に注意して行います。

 

とくに過矯正の場合には、目が閉じなくなる「兎眼症(とがんしょう)」を避けなければなりません。

 

この眼瞼下垂症手術は、マーカスガン現象を抑える治療ではなく、あくまで、通常時の瞼の高さ(目の大きさ)の左右差を少なくする治療となります。

 

マーカスガン現象自体を治す治療は、残念ながら、今のところ確立しておらず、医学の進歩が待たれることとなります。

手術方法については、眼瞼下垂ブログ記事にて、「眼瞼挙筋腱膜前転術」、「眼瞼挙筋短縮術」「前頭筋吊り上げ術」という眼瞼下垂の主な3つ方法をそれぞれご説明させていただいております。

マーカス・ガン現象特有の症状は、片側の目だけに現れる「片眼性(へんがんせい)」が一般的ですが、両側の上まぶたに同じ症状が現れる場合もありますが、非常に稀です。

そうした両眼性の場合は、両方の目を手術するケースと、程度が軽い方の目に重い方の目の程度を合わせるように、片方の目だけ手術をするケースもあります。  

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